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ガソリンだけではやっていけない

業界誌とか石油元売り(メーカー)の出す情報誌なんかを読んでいると複雑な気持ちになる。

複雑な気持ちって?それを書くには少しばかり「我々ガソリンスタンド業界」の内情について紹介しないといけない。

 

毎回、全国のいろいろなSS(=サービスステーションの略:業界内ではガソリンスタンドのことをそう呼んでいるけど一般の人がどれだけ認知しているかは知らない)が紹介されている。そうした記事がこれらの雑誌のメインコンテンツだ。内容は「○○○石油店ではオイルの月間販売数量が○○キロリットル!」とか、「タイヤ売上月間○○本を達成!」といった具合に、いかに「油外商品」を売っているかの紹介だ。「油外商品」というのは、文字通り「石油製品以外」の商品、つまりオイル、タイヤ、洗車、バッテリー、車検などだ。

 

いま、ガソリンスタンドはガソリン(及び灯油、軽油など)だけを売っていたのでは商売が成り立たなくなっている。例えばスタンドのレギュラーガソリンの月間販売数量が80KLだとすると、1Lあたりの利益がせいぜい2~3円なので、80,000L×2円=16万円...

これじゃあ店員1人の給料にもならない。

こんな低マージン状態はもちろん今に始まったことではなく、かれこれ10年以上前からだ。だから業界ではかなり前から「油外!油外!油外!」の大合唱だった。

具体的にはどうするか?

これは一般ドライバーなら大抵は身に覚えがあると思うが、業界側では「とにかく何でもいいから油外商品を『おすすめ』して売り上げろ!」そのためには「『安全点検しましょうか』と声をかけてとにかくボンネットを開けてもらえ!」という手段を取るわけだ。

もちろん他の業界でも多かれ少なかれ「関連商品」を売ろうとしているだろう。もしかしたらそのために必死になっているのかもしれない。

それが商売ってもんだ!と言われれば仕方ないんだけれど…

 

前述したとおり、業界誌上では毎度毎度いろいろなスタンドの「成功体験」「成功事例」が紹介されていて、それを読む我々は奮起して、「うちも負けてはいられない」となる…べきところだろう。

そうしないと生き残れない、潰れてしまったら明日から路頭に迷うことになる。そうすべきというより、そうしなければならない!

それはよくわかっているつもりだが、どうにも気に入らない。気に入らないとか言ってる場合じゃないけど、やっぱり気に入らない。

ガソリンスタンドがガソリン売ってるだけじゃ成り立たない。これは時代の流れというもので、オレなんかがいくら考えても、嘆いても、叫んでもどうなるもんでもない。

でも、やってることはガソリンを「エサ」にお客さんに他の(もっと利益の出る)商品を売りつけようということじゃないか!?

 

もちろん、オイル交換にしてもタイヤ交換にしてもバッテリー交換にしても車検にしても、あるいは洗車にしても(?)、いつかはどこかでやらないといけないものだ。車を乗っている以上は必要経費というものだ。それをカーディーラーでもなくカーショップでもなくガソリンスタンドで行うというだけの話だ。そういう自動車ユーザーの受け皿のひとつであるわけだから、いかにしっかり請け負って満足してもらえるように努力するかというのは商売として当然のことで、そのこと自体には何ら恥ずべきことはないだろう。

ちなみに、「油外商品」に関しての他の競合業界であるカーディーラーやタイヤショップ、カーショップなどでもいかに自分のところでメンテナンスしてもらうかに必死になっている。たとえば少し前からカーディーラーでは顧客の「囲い込み」作戦として新車販売時などに「メンテナンスパック」などと称した消耗品の交換を一手に引き受ける販売方法に戦略的に取り組んでいるし、、、

ある時たまたま某ディーラーの朝礼に居合わせた際には、工場長が整備スタッフを集めて「今日はタイヤを重点的に点検して、1本でも販売しろ!」とはっぱをかけていた。

 

まぁ、どこの業界でも自らアプローチして販売していかなければならないのかもしれないが、本当ならお客さんが自ら意志で「ここでオイル交換しよう」と言ってくれて、その時にはしっかりと作業を行って満足して帰ってもらいたいというのが本音だ。それならばこちらも気持ちいいだろうし、充実感もあるだろう。

けれども、現実には売りたいから何とかして「安全点検」にこぎつけよう…となってしまう。

「安全点検」、これも本来ならお客さんに安全に走行してもらうために実施する、それはそれだけで完結させるものだと思う。そのうえでお客さんが自ら選択する。そのためにも正確な診断としっかりした報告、そして正しい知識を提供することが必要。素人であるお客さんが自分で判断できるための最低限の(最大限の!?)知識を提供することが大事だと思う。

しかし、、、現実は、、、つまり、、、こちら側の腹の中では「とにかく点検に持っていかなくては始まらない」と、どうしても考えてしまう。上司から「あくまでもお客様のための安全点検なんだからしっかり声掛けしなさい」と言われても、その上司の本音も「何かしら売れるものを探し出せ!」なのはわかっている。この相反する考え、本音と建て前、この何ともスッキリしない感覚。

 

近所のスタンドでタイヤ販売がものすごいことになっている店がある。よくタイヤ屋さんが言うのだが、売れてるにはそれなりの理由があると。基本的にはスタッフ全員の意識が高いことが要因で、それはたしかに立派なことだと思う。ただ、その販売手法はけっこう強引なところがあるという。先日、当店をよく利用してくれているお客さんがそのスタンドで給油した際、そこのスタッフから「お客さん、もうずいぶんタイヤが減っていますねぇ。そろそろ交換時期にきていますよ」と言われたという。そこでタイヤを見てみたら、まだまだ大丈夫としか言えないような状態だった。思わず「えっ、このタイヤを交換しろと勧められたんですか!?」と聞き返してしまった。

なにより驚いたのは、お客さん自身が「もう交換しなきゃダメらしいからお願いできる?」と言ってきたことだった。

なにも知識のない主婦をだます様なことして売るのってどうなんだ…

お客さん自身が買うといっているならそれでよしとすべきなのか…

オレの思いはきれいごとなのか?

 

業界誌ではいろいろな商品の販売成功事例が載せられている。そこに載っているスタンドはいわば業界のヒーローだ。すべてが先の店のような強引な(?)販売手法をしているわけでもない。商売として大いに参考にすべきところだろう。

けれど、、、百歩譲って「消耗品」で「必需品」なら分かるが、水抜き剤だとかエンジン洗浄剤、バッテリー強化剤などに至っては、それこそ「油外収益」をあげるために存在しているとしか思えない。入れて悪いことはない、まぁ良くなることもあるかもしれないが、別に入れなきゃ入れないでも済むような代物だ。それがノルマを課せられ、「とにかく売りまくれ!」とはっぱをかけられる現状…そして、それを売っているスタンドが英雄扱いされる現状…

 

あぁ、こんなこと考えていてはスタンドマンとしては失格なのだろうか、、、ダメな店員ということだろうか、、、